遺産分割前の預貯金債権の仮分割の仮処分
相続が発生した際、被相続人が多額の債務を負担していたというケースもあります。
このような場合に、相続人が、相続財産である預貯金から債務を返済しようと思ったとしても、相続財産である預貯金は、他の共同相続人全員の同意を得ることができない限り、基本的に引き出すことができません。
どうしても他の共同相続人全員の同意を得ることができない場合、相続財産である預貯金を引き出す方法としては、①遺産分割前の預貯金債権の行使(民法909条の2)や、②遺産分割前の預貯金債権の仮分割の仮処分(家事事件手続法200条3項)といった方法があります。
①遺産分割前の預貯金債権の行使の制度は、比較的利用しやすい制度ですが、上限額が設定されており(https://www.zen-lo.jp/?p=2418%E5%8F%82%E7%85%A7%E3%80%82%EF%BC%89%E3%80%81%E8%A2%AB%E7%9B%B8%E7%B6%9A%E4%BA%BA%E3%81%AE%E5%82%B5%E5%8B%99%E3%81%8C%E3%81%93%E3%82%8C%E3%82%88%E3%82%8A%E5%A4%9A%E9%A1%8D%E3%81%A7%E3%81%82%E3%82%8B%E5%A0%B4%E5%90%88%E3%81%AB%E3%81%AF%E3%80%81%E3%81%8B%E3%81%8B%E3%82%8B%E5%88%B6%E5%BA%A6%E3%81%A7%E3%81%AF%E5%AF%BE%E5%BF%9C%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%81%AA%E3%81%84%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%A8%E3%81%AA%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
そのような場合に②遺産分割前の預貯金債権の仮分割の仮処分といった方法を利用することが考えられます。
この制度は、㋐遺産分割の審判又は調停の申立て(本案係属要件)、㋑相続財産に属する債務の弁済、相続人の生活費の支弁等のため必要であること(必要性の要件)、㋒他の共同相続人の利益を害しないこと(相当性の要件)といった要件を満した場合に、預貯金債権の全部又は一部を申立人に仮に取得させることができるという制度です。
相続財産に属する債務を弁済するといった用途以外にも、相続人の当面の生活費確保のためや、相続税の納税資金確保といったことにも利用することが可能であるため、お困りの方は、このような制度を利用することもご検討ください。
弁護士 壽 和哉

