コラム

2018-12-09
相続放棄と相続分の放棄

相続が発生した際、よく似た用語として、相続放棄と相続分の放棄というものがあります。

 

1 相続放棄
 相続人は、相続により、被相続人の財産に属する一切の権利義務を承継するのが原則ですが、相続放棄をすると、はじめから相続人とならなかったものとみなされるため、相続財産(+の財産)や相続債務(-の財産)を承継しないこととなります。

 

2 相続分の放棄
 他方、相続分の放棄とは、共同相続人がその相続分を放棄することをいい、相続財産(+の財産)を承継しないこととなります。この点は、相続放棄と同様です。もっとも、相続放棄と異なり、相続債務(-の財産)は承継します。
また、実務上、相続分放棄者の相続分は、他の相続人がその相続分に応じて相続することとされています。

 

3 具体例 
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 父親が亡くなり、その相続人が母親と長男、二男でした。
 父親が亡くなった際、相続財産(+)が3000万円ありましたが、相続債務(-)も1200万円ありました。
二男が、①相続放棄をした場合や、②相続分の放棄をした場合、相続財産(+)及び相続債務(-)は誰がどのように相続するのでしょうか。

なお、二男が相続放棄も相続分の放棄もしなかった場合、法定相続分は、母親が1/2、長男が1/4、二男が1/4となります。

 

①相続放棄
 二男が相続放棄した場合、二男ははじめから相続人とならなかったものとみなされるため、母親及び長男は、父親の財産を各々2分の1ずつ相続します。
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ア 母親                          
  相続財産1500万円  
  相続債務600万円
 イ 長男
  相続財産1500万円
  相続債務600万円
 ウ 二男
  相続財産0円
  相続債務0円

 

②相続分の放棄
 二男が相続分の放棄をした場合、相続財産(+)は承継しませんが、相続債務(-)は、法定相続分に応じて承継します。また、本来、二男が相続する予定であった相続財産(+)については、母親と長男がその相続分に応じて承継します。
 
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 ア 母親
  相続財産2000万円(1/2【母親の元々の相続分】+(1/4×2/3)【二男相続分のうち、母親が相続する分】=2/3)
  相続債務600万円               
 イ 長男
  相続財産1000万円(1/4【長男の元々の相続分】+(1/4×1/3)【二男相続分のうち、長男が相続する分】=1/3)
  相続債務300万円(相続債務の1/4)
 ウ 二男
  相続財産0円
  相続債務300万円(相続債務の1/4)

 

このように相続放棄と相続分の放棄は、似た用語ではありますが、その効果は異なるので混同しないよう注意してください。

弁護士 壽 和哉

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