コラム

2018-12-10
裁判と調停

喧嘩して「訴えてやる!」と叫んでいる光景は、よくテレビなどでも観るかと思います。ただ、夫婦がけんかして「離婚する!してくれへんねやったら訴えたる!」というのは、弁護士として、少し「ん?」なのです。慰謝料請求だけの訴訟をするのであればいいのですが、離婚自体の話であれば、まずは「調停」を「申し立てる」必要があるからです。

 

では、「裁判」と「調停」何が違うかというと、両方とも裁判所で行われる手続きであることに違いはありません。ただ、「裁判」は、「原告」(訴える方)と「被告」(訴えられる方)が、裁判官に対して証拠を提出し、主張を述べ、裁判所に白黒つけてもらう手続きです。

 

これに対し、「調停」は、「申立人」と「相手方」が、「調停員」を介して「話し合う」手続きです。「調停員」は双方の話を聞き、説得のための資料の提出を受け、双方が納得するよう、間に入り話し合いを進めます。決して調停委員が、白黒つけるわけではありません。双方が納得できなければ、審判や訴訟に移って、裁判所が白黒つけることになります。

ですので、いくら浮気の決定的な証拠があっても、相手が慰謝料の支払いに応じなければ、調停員が無理矢理「払え」と命じることはできません。よく、「こんなに証拠あってもだめなんですか。」と調停のときに依頼者に聞かれますが、調停員さんが「絶対浮気してるよね。」と考えていても、相手が支払いを拒否すれば、調停員さんとしてはどうしようもないんですね。

 

離婚や相続などは、紛争となっている事柄以外のところで感情的に関係が拗れていることが多いです。それを裁判でガチガチするより、今後の関係も考え、なんとか調停で円満に話し合えれば、ということですが、そういう事件こそ、裁判官という冷静な第三者に白黒つけてもらった方がいいのにな、と思うこともよくあります。

 

弁護士 明司絵美

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