交通事故により、被害者が契約していた任意保険の車両保険を使うと、等級が下がって保険料が割増になります。
この場合、割増になった保険料を、加害者に請求できるのでしょうか。
最高裁判例はありませんが、裁判例としては、名古屋地判平成9年1月29日(自保ジャーナル1201)や、東京地判平成27年9月29日(交民48巻5号1195頁)があり、保険料の割増分の加害者への賠償請求を否定しています。
これらの裁判例においては、被害者は、①車両保険を使うか、②車両保険を使わず、加害者から支払われる損害賠償金で賄うか、③加害者から支払われるのを待つことなく、一旦、自己負担により対応するかを自由に選択でき、被害者自身の意思で、年間保険料が増額する①を選択した場合、かかる年間保険料の割増分を加害者に請求できないとされています。
そのため、交通事故に遭い、加害者側が車両の修理費用等をなかなか支払ってくれないような場合に、とりあえず、車両保険を使って対応するといった方法をとると、被害者の方で、保険料の割増分を負担せざるをえなくなるおそれがあるので注意してください。
弁護士 壽 和哉
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